
今回は、LTCMについて解説していきます。
LTCMとは、いわば当時の投資界のドリームチームといういうべきヘッジファンドのことですが、この歴史を知ることにより私たち一般のトレーダーも学ぶべきことがあると思います。
目次
投資界のドリームチームLTCM
今から20年近く前に、実際に投資界のドリームチームと呼ぶべきファンドが存在しました。
その名は、ロングターム・キャピタル・マネジメント(略してLTCM)。
LTCMは、ジョン・メリウェザー氏によって設立され、1994年から運用が開始されたヘッジファンドです。
ジョン・メリウェザー氏といえば、ソロモン・ブラザーズで活躍し、取締役副会長までのぼりつめた敏腕トレーダーです。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙でも『ウォール街の帝王』とまで言わしめたメリウェザー氏でしたが、彼はソロモン・ブラザーズを退社しLTCMを立ち上げました。
大手証券会社などを退社し、ただファンドを立ち上げただけならよくある話かもしれません。
しかし、このファンドは一味違いました。
なぜなら、そうそうたるメンバーがズラリと並んでいたからです。
このファンドには、FRB元副議長を務めたデビット・マリンズ氏。
後にノーベル経済学賞を受賞するロバート・マートン氏、マイロン・ショールズ氏両名も参加していました。
まさに、実力、名誉、地位を兼ね備えた投資界のドリームチームでした。
これだけのメンバーが揃ったのだから、このファンドが一体どうなるのか、まさに見ものですよね。
その期待は大きく、当初より12億5000万米ドルの資金を世界中の証券会社、銀行、投資家、富裕層から集めることに成功します。
そして、彼らはドリームチームと呼ばれることを裏切らない活躍を世間に見せつけます。
平均の年間利回り40%を突破するなど大きな成功を収め、最盛期には1000億米ドルを運用するまでに規模を拡大させました。
一つの国の国家予算並の額を、このファンドで運用していたことになります。
わずか4年の天下
しかし、華やかなスタートを切り、順風満帆に思えたLTCMでしたが、すぐに終わりを迎えることになります。
それは、1997年にアジア通貨危機が発生し、さらにその煽りを受けて、1998年にロシア財政危機が立て続けに起きたのが原因でした。
ロシアが債務不履行を宣言したことにより、新興国への債権・株式はリスクが高いとして、投資家などが一斉に新興国市場より資金の引き上げを始めたのです。
LTCMは質への逃避は長続きしないと楽観視し、短期間で新興国には資金が戻ってくると判断し、そのままポジションを保有し続けました。
しかし、ドリームチームの思惑とは裏腹に、新興国へのリスクの不安は収まることなく、さらに資金引き上げが加速していったのです。
新興国の債権を買い増ししていたLTCMにとって、それは大きな誤算でした。
結果として、LTCMの負債総額46億米ドルに達し、破綻に追いやられてしまったのです。
このことを重く見たFRBは、すぐに破綻させると世界恐慌のような未曾有の危機が訪れると判断します。
そのため、危機を回避するため、大手金融機関を中心に約36億米ドルの融資をLTCMに行いました。
融資を受けることには成功しましたが、メリウェザーを中心とした運用者は、返済まで3年間は退職することを許されず、またボーナスや運用報酬はほとんどゼロという、トレーダーとして屈辱的な契約を結ばされたそうです。
その後、LTCMは融資のうち9割を1999年までに返還すると、そのまま解体されました。
その点はさすがドリームチームというべきでしょうか。
マイロン・ショールズとロバート・マートンの二人にとって、この悲劇はノーベル賞受賞後わずか1年の間にあった出来事でした。
ことの重大さから、中には二人からノーベル賞を剥奪したほうが良いという意見もあったようですが、そこまでには至らなかったようです。
一方のメリウェザー氏はLTCMを清算した後も、新しくJWMとパートナーズという新しいファンドを立ち上げましたが、世界金融危機のダメージを大きく受けてしまい、こちらもわずか10年ほどで閉鎖に追い込まれてしまいました。
しかし、2010年に3度目となる新しいファンドを立ち上げたのだから、その商魂たくましい姿はさすがと言うほかありません。
果たして今度のファンドは、3度目の正直となるのでしょうか。
今後の展開も見逃せません。
失敗から学ぶ、そして立ち上がる
今回の話はいかがでしたでしょうか?
いくら一流の人間が集まったとしても、必ずしも成功するとは限らないという教訓が得られる内容でした。
一流の人間たちがいくら集まっても失敗することはあるのですから、私たちも、少しくらいの失敗で落ち込んで立ち止まることのないようにしたいものですね。
トレードは、失敗を活かすことが何よりも大切です。
メリウェザー氏のように失敗しても、また立ち上がる気持ちこそ、トレードにおいては大切ではないでしょうか。
相場を数学的に読み解くことは不可能
また、ノーベル経済学賞を受賞した人間が参加したにも関わらず、LTCMは破綻しました。
これは、少し論理の飛躍があるかもしれませんが、相場を数学的に読み解くことは不可能ということではないでしょうか。
少なくともノーベル賞を受賞したような人たちにできなかったのですから、我々一般のトレーダーが数学的に読み解くことはまず不可能と考えるべきです。
あくまで、我々がすべきことは現在の相場が
買われてるならロングの検討、
売られているならショートの検討、
どちらでもないならノートレード、
これだけだと思います。
サーフィンのように相場の波に逆らうことなく、その波を上手く利用して乗りこなし利益を上げていきたいものです。
それでは今回は以上です。
ありがとうございました。